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庭のない国に「空のコンビニ」は根づくか 米国の先行例から読むKDDI×Wingの勝ち筋

7 時間前
読了時間: 5分

【コラム】文責:EC・小売物流記者 N

日本の郊外の町の上を、小さな荷物を運ぶ配送ドローン(イメージ)

KDDI、KDDIスマートドローン、Alphabet傘下のWing Aviationの3社は2026年10月27日、日本でのドローン配送の本格導入に向けて提携した。2027年中に一部エリアで、ローソン商品を含む食料品や日用品の配送開始をめざす。リリースは背景に、高齢化に伴う買い物困難者の増加、共働き子育て世帯の「時間貧困」、ドライバー不足を挙げ、食料品アクセス困難人口を全国で約904万人(農林水産省、2020年推計)としている。

米国はもう「店から飛ばす」段階にある

米国では、ドローン配送はすでに実証の段階を過ぎている。Wingは2026年1月、ウォルマートとの提携を150店舗広げ、2027年に270超の拠点で4,000万人超に届ける計画を発表した。10月5日にはデンバーとシアトルを2027年の追加先に挙げ、これまでに300万人超の顧客が使える状態になったとしている。運航中の地域はダラス・フォートワース、アトランタ、ヒューストン、オーランド、シャーロットの5都市圏で、機体は最高時速約60マイル、最大5ポンドまで運ぶ。

アマゾンのPrime Airは8月、11拠点から2026年末までに約500の市や町へ広げると発表した。5ポンド以下で大きめの靴箱に入る商品ならほぼ対象になり、プライム会員は50ドル以上の注文なら配送料がかからない。

テキサス州には各社が集まっている。Wingはヒューストンで、Prime Airはダラス近郊やサンアントニオ、ウェーコで飛ぶ。Ziplineはダラス・フォートワースで1日数千件を運び、10月9日にはオースティン北郊のラウンドロックでも先行利用を始めた。プログレスクラブ主宰の角井亮一氏も、テキサス州でZiplineとWingのドローンが飛ぶところを現地で見ている。ラウンドロック市は住民向けに、飛行経路を規制する権限は連邦航空局(FAA)にあり、市が関われるのは拠点の立地などに限られると説明している。

差は技術より「置き場所」と「店の構え」にある

日米の差は技術ではないと私は考える。Wingは同じ仕組みを米国で毎日動かしている。差は三つあるとみる。

一つ目は受け取る場所だ。Wingは荷物をテザーで降ろし、ウォルマートは前庭や裏庭、ドライブウェイを受け取り場所にしている。私の育った下町の家並みや都市部のマンションには、そうした「ピクニックシート1枚分」の空きがまずない。日本では、郊外や地方の戸建て、あるいは公園や集会所のような共同の受け取り場所から始まると読む。

二つ目は店の構えだ。米国のスーパーセンターは敷地が広く、店の中や駐車場に離着陸拠点を置ける。日本のコンビニは一店一店が小さい代わりに、数が多く生活圏に近い。大型店一つに拠点を集めるのではなく、近くの複数店の商品を一つのポートに集める設計が要るとみる。

三つ目は制度だ。米国でも目視外飛行を通常化する新ルール(いわゆるPart 108)は10月時点で最終規則が公表されておらず、各社は個別の認可で飛んでいる。日本は2023年12月、操縦ライセンスを持つ人が機上カメラで歩行者などの有無を確かめれば、補助者や看板の配置を不要とする「レベル3.5飛行」を新設した。制度の差は縮まりつつあり、残るのは事業者が「件数を回す」覚悟の差だと考える。

誰が得をするのか

いちばん得をするのは、車を手放した高齢者と、子どもが熱を出した日の親だと思う。娘が夜に熱を出したとき、幼い息子を連れてスポーツドリンクと冷却シートを買いに出るのは本当につらい。30分ほどで玄関先に届くなら、数百円の配送料を払う家庭は少なくないとみる。

一方で、母親として気になるのは温度と衛生だ。Wingは米国で卵やひき肉、生のトマトも運んでいる。日本の夏に生鮮品や乳製品をどう保冷するのか、地面に置かれた袋に子どもが触れる前に誰が受け取るのか。ここを丁寧に詰めた事業者が、子育て世帯の信頼を得ると考える。

小売の側では、ローソンにとって店舗が「売り場」から「小さな配送拠点」へ役割を広げる好機と読む。宅配事業者には、採算の合わない山間部の小口配送を任せられる補完役になる。逆に、店舗網を持たないネットスーパーは、空の即時配送を持つ店舗型の小売に差をつけられるおそれがあるとみる。

2027年の開始エリアがどこになるかで、この提携が「買い物困難地域の支え」なのか「郊外の即時配送」なのかが見えてくる。私は両方を狙うべきだと考えるが、最初の一歩は、庭があって車に頼る暮らしの地方郊外が現実的だとみる。

【お知らせ】角井亮一氏は2027年7月、人数限定の米国視察ツアーを予定しています。募集は限られた範囲で行うため、案内を受け取るには無料メールマガジン「物流話」への登録をおすすめします。

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