top of page

アマゾン30万人採用が示す「福利厚生で人を集める」時代 ―物流の人手不足、日本企業の次の一手

3 分前
読了時間: 5分

【コラム】文責:物流ニュースデスク I

アマゾン30万人採用が示す「福利厚生で人を集める」時代

「30万人超」。年末商戦に向けた採用としては、けた違いの数字です。

米アマゾンが2026年10月20日、年末のホリデーシーズンに向けて、米国の物流現場(コアオペレーション)で30万人以上を採用すると発表しました(アマゾン発表)。季節雇用だけでなく、パートタイムやフルタイムも含めた数字です。

ロイターの報道によると、過去3年は25万人でした。2割増で、3年ぶりの増加です。

ただ、この発表で本当に読むべきなのは、人数ではないとみます。


時給の次は「医療保険」

アマゾンは、2027年1月1日から、週30時間以上働く季節雇用の従業員にも、勤務初日から医療保険を提供すると発表しました。プランは週5ドルから、受診時の自己負担(コペイ)は5ドルです。

初日からの医療保険は、これまで正社員(フルタイム)向けの制度でした。それを、年末の数カ月だけ働くかもしれない季節雇用にまで広げたわけです。

給与面では、季節雇用の平均時給が20ドル。フルタイムは初任時給が最低20ドルで、平均は約24ドルです。福利厚生を含めた平均総報酬は、1時間あたり32ドルを超えるとしています。さらに、従業員と家族が生涯使える低コストの銀行サービス「Day 1 Financial」も新たに用意しました。もともと、対象の従業員にはプライム会員の無料提供や、学費の前払い支援といった制度もあります。

病気になったとき、お金を管理するとき、学び直したいとき。働く人の生活のいろいろな場面を、会社が支える形です。

時給だけでは人が集まらず、福利厚生まで出さなければならない。米国の物流現場は、そういう段階に入ったとみます。


米国では「待遇競争」が始まっている

これはアマゾンだけの話ではありません。ロイターは、ウォルマートも直前に従業員の医療保険を拡充したと報じています。

アマゾンは9月にも、ラストワンマイルを担う委託先「デリバリー・サービス・パートナー(DSP)」に、2027年に19億ドルを追加投資すると発表しました。配送員の全米平均時給は約24ドルになる見通しです(アマゾン発表)。

倉庫でも、配送でも、人の取り合いが起きています。時給を上げるだけでは差がつかなくなり、医療保険や金融サービスといった「生活の安心」で選ばれる競争になっている、と読みます。

競争の手段は、お金や保険だけではありません。米国では、社内にフィットネスジムを設ける会社も珍しくありません。米国の人事専門家の団体SHRMが2025年にまとめた福利厚生調査では、回答した3,969の組織のうち21%が、職場にフィットネス施設やフィットネスクラスを用意していました。教育・行政分野に限ると37%です(SHRM)。2019年の同じ調査では、職場内でのフィットネス支援が29%、社外のジムの会費補助など職場外での支援が32%でした(SHRM)。

体を動かす場を会社が用意するのは、オフィスで働く人のためだけではないと考えます。荷物を持ち、歩き、立ち続ける物流の仕事こそ、体が資本です。


日本の物流現場は、何で人を集めるのか

では、日本はどうでしょうか。

国土交通省の検討会の提言案では、何も手を打たなければ、2030年度に平均で約7%、最大で約25%のトラック輸送力不足が生じうると試算しています(国土交通省資料)。2024年問題への対応で改善は進みましたが、人手不足が終わったわけではありません。

それでも、日本の物流現場の採用は、まだ「時給をいくらにするか」の勝負になりがちだとみます。しかし、時給はすぐ他社に追いつかれます。

デスクは、これから差がつくのは次の3つだと考えます。

1つ目は、短時間や季節の人にも「安心」を出すこと。非正規だから福利厚生は最低限、という発想を見直す時期です。

2つ目は、繁忙期の採用を「正社員への入口」にすること。アマゾンも、季節雇用からフルタイムへ移る道を用意しています。繁忙期に来てくれた人を、定着につなげられるかが勝負です。

3つ目は、働く環境そのものへの投資です。自動化やDXで、きつい作業や危ない作業を減らすことも、立派な福利厚生です。体をつくる場を社内に用意することも、その一つです。日本でも、角井代表の知る会社で、社内にフィットネスジムをつくり、それが長期雇用につながっているところがあるといいます。

社内ジムは「福利厚生のおまけ」ではなく、働き手が長く現場に立ち続けるための設備投資だと読みます。フォークリフトや仕分け機に投資するのと同じように、人の体に投資する。そう考える会社が、これから人を集め、残していくとみます。


採用はコストではなく、経営戦略

アマゾンの30万人採用は、単なる年末の人集めではありません。「人が集まる会社であること」そのものを、物流の競争力として磨いている。デスクはそうみています。

人手不足の時代、荷物を運べるかどうかは、人を集めて定着させられるかどうかで決まります。採用と定着は人事部だけの仕事ではなく、経営者が向き合うべき物流戦略そのものです。

もちろん、日本企業がアマゾンと同じ規模で福利厚生を出すのは簡単ではありません。それでも、「何を出せば、うちで働き続けたいと思ってもらえるか」を考えることは、どの会社にもできます。働く人の声を聞き、小さくても一つずつ形にしていく。その積み重ねが、数年後の輸送力の差になると考えます。

みなさんの会社では、時給以外に「ここで働きたい」と思ってもらえる理由を、いくつ挙げられますか?


【お知らせ】

物流の最新動向を追いかけたい方には、無料「物流話」への登録をオススメします。

無料「物流話」登録> https://www.ourprogress.jp/mailmag


【出典】

・Amazon「Amazon is creating 300,000+ US seasonal jobs with increased pay, expanded benefits」(2026年10月20日)https://www.aboutamazon.com/news/workplace/amazon-holiday-jobs-2026-seasonal-hiring-healthcare

・Reuters(Investing.com掲載)「Amazon to recruit over 300,000 workers for holiday season in first hiring jump in three years」(2026年10月20日)https://www.investing.com/news/stock-market-news/amazon-to-recruit-over-300000-workers-for-holiday-season-in-first-hiring-jump-in-three-years-4960341

・Amazon「Amazon invests another $1.9 billion in the Delivery Service Partner program」(2026年9月)https://www.aboutamazon.com/news/transportation/amazon-dsp-program-investment-2026

・SHRM「Education and Government Employers Prioritize Wellness Benefits」(2025年9月15日、2025年SHRM福利厚生調査)https://www.shrm.org/enterprise-solutions/insights/education-and-government-employers-prioritize-wellness-benefits-

・SHRM「Employers Boost Benefits to Win and Keep Top Talent」(2019年6月25日、2019年SHRM福利厚生調査)https://www.shrm.org/topics-tools/news/benefits-compensation/employers-boost-benefits-to-win-keep-top-talent

・国土交通省「2030年度に想定される輸送力不足への対応方針」(2030年度に向けた総合物流施策大綱に関する検討会 提言案)https://www.mlit.go.jp/seisakutokatsu/freight/content/001984794.pdf

コメント


「物流話」に無料登録を!

Thank you!

物流人材育成のプログレスクラブ

© 2025- PROGRESS CO., LTD

  • Facebook
  • Twitter
  • Youtube
  • Instagram
  • Linkedin
公式LINE「物流人材育成のプログレス」
bottom of page