なぜ人はAmazonで買うのか─答えは物流に
- 角井亮一

- 6 日前
- 読了時間: 4分

新たに15か所増設された配送拠点は、DS(デリバリーステーション)と呼ばれています。
デリバリーステーションとは、ラストワンマイル配送の起点となる拠点で、アメリカではもともと「プライムセンター」と呼ばれていたタイプの施設です。日本でも同様の思想で展開されており、今回の増設を含めると、全国で65拠点以上のDSが稼働することになります。
この数字が意味するのは、単なる拠点数の増加ではありません。配送ネットワークが「点」ではなく「面」で構築されつつあるということです。拠点間の距離が縮まり、配送ルートが単純化されることで、結果として既存の宅配会社よりも効率的な宅配ネットワークが成立する可能性が高まっています。

DS拡大が生む「速さの当たり前化」
DSの拡大がもたらす最大の変化は、配送スピードを「付加価値」ではなく「前提条件」にしてしまう点です。翌日配送や当日配送が特別ではなくなると、顧客はそれを当然のものとして受け取るようになります。
一方で、そのスピードを実現できないサービスは、意識されることなく選択肢から外れていきます。これは物流の問題であると同時に、顧客体験の問題でもあります。速いから選ばれるのではなく、速くないと選ばれない時代になっているのです。
2024年問題と「消費者は正直」という現実
2024年問題によるドライバー不足を背景に、「スピード配送は見直すべきだ」「配送料ゼロは持続不可能だ」といった批判的な論調の記事を目にすることが増えました。
確かに、現場の負荷や持続可能性を考える視点は重要です。しかし一方で、消費者は非常に正直です。
同じ商品であれば、
早く届くほうを選びます
配送料がかからないほうが購入意欲は高まります
これは理念ではなく、行動の結果です。現実として、スピード配送と送料無料は、確実に購買を押し上げています。
だからこそAmazonは、この領域で妥協しません。社会課題があるからといって、顧客体験を後退させるのではなく、インフラ投資によって解決しようとしています。
便利な宅配が購買動機を作る時代
現在、顧客がAmazonで商品を購入する理由は、価格や品揃えだけではありません。「すぐ届く」「確実に届く」という体験そのものが、購買動機になっています。
つまり、物流がマーケティングの役割を担い始めているのです。広告やキャンペーンで説得しなくても、配送体験がリピートを生み出します。
顧客は無意識のうちに、「早く届くならAmazonで買う」という行動様式を身につけています。DSの拡大は、この行動をさらに強化することになります。
BigB2C時代に追いつけない物流インフラ
PHP新書『すごい物流戦略』でも書きましたが、宅配の前提はすでに変わっています。
かつてのC2C(個人間配送)中心の時代から、現在はBigB2C(巨大企業から大量の個人へ)の時代に移行しています。
この点については、同書で行ったドイツDHLの取締役へのインタビューを通じて、私自身も確信を持ちました。DHLはすでに、BigB2Cへの移行を大規模なインフラ投資によって完了しています。
需要構造が変わった以上、ネットワークを作り替える。その判断を、時間をかけて、しかし確実に実行してきたのです。
作り変えられない側と、新しく作る側の差
一方、日本の多くの物流・宅配会社は、既存インフラを前提とした事業構造から抜け出せていません。設備、人員、契約が制約となり、インフラを根本から作り変えることが難しいのが現実です。
Amazonは違います。インフラを「新しく作る側」だからこそ、作り替えるよりも投資効率が高く、意思決定も速い。物流を競争力の中核と位置づけているため、躊躇なく投資を続けられるのです。

まとめ|顧客体験の裏側には物流投資があります
DSの拡大は、物流の話でありながら、購買行動そのものを変える力を持っています。便利で速い宅配が当たり前になればなるほど、顧客はAmazonを選び続けます。
2024年問題があっても、消費者の行動原理は変わりません。だからこそ、問われているのは「我慢を求めること」ではなく、構造で解決できるかどうかです。
これからのEC競争は、価格や広告ではなく、物流インフラへの投資と設計思想によって決まります。AmazonとDHLの取り組みは、その現実を明確に示しているのです。
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